伊藤新道&鷲羽・水晶

日時:2025 年 8 月 2 日 (土)~5 日(火)

参参加者 4 名 L N澤(記)・M野・K田・(外)S木

【8月2日(土)】
 高瀬ダム13:02~14:04湯俣温泉登山口~14:28名無避難小屋~15:20湯俣山荘(泊)
【8月3日(日)】
 湯俣山荘5:02~5:40 噴湯丘~6:34 ガンダム岩~8:08 第三吊り橋~8:44 ワリモ沢出合~9:43 第五吊り
 橋跡(脱渓)10:03~10:25クロマメ(避難)小屋~12:18展望台~13:25第一庭園~14:39三俣山荘(泊)
【8月4日(月)】
 三俣山荘5:46~6:57鷲羽岳~7:39ワリモ岳~8:46水晶小屋~9:39水晶岳~12:58竹村新道分岐~14:02
 野口五郎小屋14:26~15:54三ッ岳~17:02烏帽子小屋(泊)
【8月5日(火)】
 烏帽子小屋6:28~7:40中休み~8:20権太落シ~9:17高瀬ダム

台風9号が関東地方に迫る中,珍しく土曜朝発で都心を出発する。今回の山行は3泊4日だが,初日は湯俣山荘までをほぼほぼ水平に3時間のみ。最終日も烏帽子小屋からの下山3時間だけなので,メインは2日目の伊藤新道と3日目の裏銀逆走となる。ただ伊藤新道の渡渉を考えるとテン泊装備は避けたく,3泊とも小屋泊という自らとしては前代未聞な大盤振る舞いな計画とした。高瀬ダムまでのタクシーで運転手は「関東は台風で大変みたいだけれど,こちらはずっと雨は降っていない」という心強い助言を受け,ダムに降り立つ。いざ湯俣に向け出発しようとすると,元会員のY本ノさんと出くわす。あちらはちょうど縦走から下山をしたところ。世間は意外に狭い。高瀬川沿いの林道と登山道を進むと,気温は高いもののダム水面が見ながらの水平歩きなので,そこそこ涼しく,あっというまに湯俣山荘に到着。2年前に(40 年ぶりに)リノベーションされたという建物は,躯体をそのままに内装がそっくり新調され,寝室はドミトリータイプ(いわゆるスキーヤーズベッド)で,夕食は信州産の豚ヒレ肉(またはオプショナルでラム肉の低温調理),朝食は白がゆ定食といかにもオシャンティーに。ただシャワーしかないので,夕食後に川向いの晴嵐荘までジップラインで温泉につかりに行く。湯俣山荘に戻って,伊藤新道通行届に記入し諸注意を受け,その後はバーでジンソーダで前夜祭。初日から散財。


翌朝,出発しすぐに「左 千天出合-槍ヶ岳」の道標。ここから水俣川を遡上すれば天上沢と名を変え,あの北鎌尾根へ至れる。いつかの想いを胸に「右 伊藤新道-三俣蓮華岳」の湯俣川を進む。川のあちこちで噴気が上がっており,足元は温泉芝が水面にユラユラしている。そんな中,左岸に噴湯丘が突然現れた。この前で記念撮影。
まさにドラゴンクエストのスライムにそっくりな奴である。これを過ぎるといよいよ本格的に渡渉モードとなる。女子二人を挟み込む形でK田さんと自分で前後を張るが,

水流の中にそれなりに岩や大石が沈んでおり,それらを使うと,割と労せず渡渉ができる。回数も多く厳しい渡渉が続く赤石岳小渋川ルートと比較すれば,正直どーってことは無い。無残に壊れた第一吊り橋を横目に渡渉するのも危険ではなく(むしろ踏み板も無く,ワイヤーもヨれている吊り橋は相当危険に見えた),ガンダム岩もホチキスといわれる手がかりにセルフをとりながら行けば(取らなくても全然問題ないが)安全に通過できた。

ヘツリ箇所と思われるところも,そのまま水流を歩き遡上してしまう有り様で,10 時前には第五吊り橋跡に到着。造ったばかりの避難小屋を一目拝みたく,ここで脱渓とする。脱渓点から 30 分ほど斜面を登ると「クロマメ(避難)小屋」が現れた。僅か1週前に上棟をしたばかりでピカピカのかわいい平屋の小屋だった。

ここから一旦赤沢に下り,さらにそこから本格的な山道が始まる。山道といっても滝の巻き道みたいな急登が続き体力が奪われる。左手にひたすら(夏には全く登れない)硫黄尾根が見え続けるが,この尾根は伊藤新道と北鎌尾根に挟まれており,ということはこのいずれかに来ない限り間近に見えないということになる。

ダケカンバ林帯にまで来ると,前方に鷲羽~三俣蓮華の稜線の鞍部がみえてくるが,カールを思いきり反時計回りに回り込むためなかなか近づかない。見えはしないがあの鞍部のすぐ向こう側に三俣小屋がある。そう言い聞かせながら 15 時前には三俣小屋に到着。


伊藤新道パートが無事終了となる。この小屋には何度も訪れているが,宿泊は初めてだ。湯俣小屋宿泊だと一人3千円割引は嬉しい。それに小屋内で使える 500 円の金券を渡され,環境保母のための寄付を勧められる。同時に登山道環境保護の話を聞かされ,蹴局金券でストック先のゴムを購入した。受付をすませ2階大部屋の一番奥に陣取ると,ザーッと夕立が屋根を叩く音。間一髪で難を逃れた。夕食前に名物チーズケーキをと反対2階の喫茶ルームに向かうとすでに終了していて,夜喫茶があると聞く。
夕食は長野鹿のジビエシチュー。どこまでもおしゃれな山小屋で通すらしい。夜喫茶が始まるまで寝床でまったりしていると,
角田さんが伊藤敦子社長と長々と話し込み,様々なネタを仕入れてきたようだが,それは又の話。夜喫茶は確かにコーヒーも出すしケーキも出すが,なにか夜の店の雰囲気。それもそのはず。女性スタッフ5,6人で喫茶を回しており,男性スタッフが一人もいないのである。ケーキをつまみにビールを飲むという愚行をし就寝する。

朝食は,昨夜と大きく変わり男性スタッフしかいない。メニューは猪サルシッチャをパンで挟む,って要は猪ホットドック。どこかおしゃれな山荘のカフェをあくまで演出したいのか。5:40 三俣小屋出発。
右眼下に鷲羽池を見ながら鷲羽岳への登り,朝靄に包まれた山頂に着く。
雲のかかる黒部五郎を除き,三俣蓮華岳から薬師,立山雄山まで見渡せ,眼
下には黒部源流域や雲ノ平山荘も良く見える。8年前にここに来たときは
この地域に初めて足を踏み入れたこともあり,全く周りが何が何だかわか
っていなかったが,今回はどこも行ったところで感慨深い。ここから長い長い稜線歩きの始まり。

まずはワリモ岳を経由し水晶小屋へ。
ここで荷物をデポして,とりあえず空身で水晶岳ピストン。この往復で雲が晴れ,槍の穂先が顔を出す。水晶小屋に戻り一休み。ここも伊藤グループの小屋の一つで,三俣小屋では「水晶のアイスがおいしいですよ~」と聞かされていたので,どんなものかと見たら「そば粉のガレット\2,000」えっそれは無いでしょうと,結局カップ麺を食す。伊藤新道に続き百名山2座も終わってもはや消化試合モードだが,帰らないわけにはいかない。

この裏銀座ルートは烏帽子小屋付近まで植生はなく,ザレと石と岩しかない。北アの稜線というのは大概そうなのだが,ここはハイマツも少なく,さりとてそそり立つ岩峰もなく,青空と強烈な日差しが降り注ぐ中,淡々と地形に合わせ降りたり登り返しを繰り返す。
途中の野口五郎小屋はそんな砂漠のオアシスのような役目なのだが,今シ
ーズンの少雨で,立ち寄りの旅人には,この日は水もペットボトルも一切売ってもらえない。(ビールと凍らせたリンゴアイスは販売)三俣の水場で各自2ℓ の水を汲んできているので水涸れの心配は無いが,小屋をアテにしてきていたら酷いことになっていたところ。長居は無用と出発するが疲労と暑さでスピードが鈍化。コマクサ群生地を横切りながらトボトボ尾根を下り烏帽子小屋にはちょうど 時に到着。ここも水不足なようだが飲み物の販売はあったし,なにより冷えたビールが身体に染みる。素泊まり予約だったが朝食を急遽追加できたおかげで,朝までまったり。
翌朝,朝食はおにぎり2個と即席みそ汁だけだったが,ここまでの食事が変化球ばかりだったので,妙に味わって食す。小屋をでると周囲をガスが覆っており,視界が悪い。予報では今日は荒れ模様。

あとはブナ立尾根の急登をとことこ降りるのみ。ブナ立尾根は北アの三大急登の一つだが,日本の三大急登でも黒戸,西黒とともに数えられている,屈指の急な登山ルートだ。とはいえ整備は行き届いており, 番まで番号が振られておりテンポも取りやすい。淡々と下山し 時前には登山口。不動沢の吊り橋を横切りトンネルを抜けると高瀬ダムに出る。ダム上を横断中,タクシーが居ないのは遠目にも判り,これは公衆電話で呼ぶのだなと思ったら,向こうから突然タクシーがやってきた。グッドタイミング!と思ったら,なんと行きに乗った運転手。こんな狙ってもあり得ないような偶然はあるのだなとシミジミ。