槍ヶ岳(山スキー)

日時:2025 年4 月26 日 (土)~27 日(日)N澤(記)・K井

行程:【4/26】上高地河童橋6:07~明神6:45~徳澤園7:33~横尾山荘8:31~11:00槍沢ロッジ11:37~ババ平12:29~水俣乗越分岐(大曲)12:54~殺生ヒュッテ分岐16:32~17:28槍ヶ岳山荘(泊)
【4/27】槍ヶ岳山荘 7:40~8:30 槍ヶ岳8:43~9:20 槍ヶ岳山荘10:02~殺生ヒュッテ分岐10:29~水俣乗越分岐(大曲)10:59~11:29槍沢ロッジ11:57~横尾山荘13:19~14:33徳澤園14:48~15:28明神15:38~16:16河童橋

槍ヶ岳に山スキーで挑んでみたい。

しかし夏場の北アルプスと違って制約が多い。テント泊装備を持っては滑りたくないし、かつ上高地から入る場合タクシーは(キャリアが無いので)使えない。バスが上高地まで入り、山小屋が営業するようになるのは GW だが、昨シーズンのように少雪だと GW 頃には雪が無くてスキーに向かなくなる。

今シーズンは沸騰化と言われながらも雪は多く降ってくれている。上高地の山開きとなる週末に照準を合わせ計画を練った。バスはこの週末は沢渡よりも平湯からの方が少し早く上高地に到着できる。平湯あかんだな駐車場で車中泊。翌朝夜も明けきらない4:30にはバス停には列ができていた。慌ててなんとか席を確保。バスに乗り6時前の晴れ渡った上高地につく。K井さんにとっては初上高地。
板をザックにくくりつけシートラの始まり。徳澤園でコーヒーを飲み、横尾を過ぎたところから槍に続く登山道は雪で埋まっていた。もともと明瞭な登山道でピンクテープもあろうはずもなく、記憶と GPS で梓川の左岸を遡る。

11 時に槍沢ロッヂに到着。夏道ではここから肩までは5:30 のコースタイムだからそれほどのんびりしてはいけないのだが、シール装着やらなんやらで 30 分以上の大休止。


ババ平からはピーカンに晴れ雪で覆われた槍沢を2人で遡上する。槍の穂先が見えるようになる(夏で言うところの天狗原の分岐)手前あたりから雲が多くなり、風が正面から吹きおろしてくるようになった。傾斜もきつく、このあたりからシールが滑ることが多くなり直登が厳しくジグを切って標高を稼ぐようになる。

殺生ヒュッテを右手にみるぐらいで、風はますます強く前方から吹き付け、気温も下がり、ザラメ雪だった表面はそのまま凍りクラストしてきて、クトーをつけてもシールが効かずズルズル後退するようになった。ここまでか…。風が強く傾斜が強い状況のシートラは気が進まないが、モタモタしていると日も暮れ低体温症になりかねない。

スキー靴にアイゼンをつけ、肩の小屋目がけ一歩一歩担ぎ上げる。肩の小屋につ くと17時からの食事はもう始まってしまっているとの事。「なんとか 18時には食べられるようにします」と宣言し、K井さんの到着を待ちわびながら、チェックインを済ませる。スキー置き場に1本もスキーは無く、この小屋開き初日の晩にスキーでの宿泊は我々二人だけと知る。

17:45にK井さんも到着。晴れた槍の穂先が綺麗だが、そんなことをしている間もなく、部屋に荷物を入れ,大食堂で2人だけの晩ご飯(酢鳥?)を掻き込む。外は強風で本館2階の部屋はとても冷え込んでる。幸い談話室は強めの暖房で、ちびちび缶酎ハイを飲みながら身体の冷えを癒した。館内はものすごい混んでいるのかと思いきやどうやら 30 人ほどしか宿泊していないようだ。

翌朝朝日が部屋に飛び込んできた。風は強いが空は晴れ渡っている。通常の山屋なら速攻行動開始だが我々は違う行動をとる。
出発準備もせず 7:30 のチェックアウトギリギリまで部屋に居て、その後はロビーに移り、気温が上がり雪面が緩むのを待つ。せっかく時間があるので、スキー靴&アイゼンで穂先に上がってみる。K井さんはアイゼンに不安があり自分一人で登ることとなったが、いかんせん足首が固定されてミックスを登るのは(下りるのはもっと!)慎重かつ緩慢な動きを強いられた。

幸い穂先に取りついてからは風を受けなくて済んだので,時間はかかるもお馴染みの(おととしの年末以来の)穂先で写真をとる。無事、肩の小屋に戻りコーヒーを飲んでいると、下(槍沢ロッヂ宿泊組)からの登山者が少しづつ来訪し始めた。


10時、小屋を出ると暴風は爆風に変わっていた。とても大喰経由なんてする気もなく、すぐにでも稜線から降りることになったのだが、スキーを履くのも一苦労。履いても急傾斜とダウンバーストの中よろよろと斜滑降で高度を下げる。転倒して板が脱げたりすると履けなくなる公算が高い。尻もちをつこうものなら強制滑落が目に見えている。だいたいギャラリーだらけでそれは恥ずかしい。

キリキリと緊張しながら殺生ヒュッテあたりまで下がってくると、風も緩み、雪も緩み、ようやく登山者に見せつけれれる滑りができるようになる。こうなるとスキー下降は早い。往路6時間かかって登ったところを1時間ちょっとで槍沢ロッヂに到着した。ここから靴を履き替え、ザックに板をくくりつけ、上高地までとぼとぼ歩くだけである。