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2015黒部川上の廊下(2015/822-25)

何年もの間温めてきた上の廊下遡行。何度かトレーニングも行いのぞんだ今年2015年8月、天候にも恵まれてついに念願を果たしました。(文=I西、写真=シンジ、コースケ)

8/22 雨のち晴れ
黒部ダムのバックウォーター付近の流れ(左)、圧倒的な水量に身震いしそうだ。透明度が高く水深を見誤りやすいがとうてい渡渉できる水位と水勢ではない。奥黒部ヒュッテへの登山道(右)はアップダウンの連続で楽ではないが、問題になる箇所はない。渓の夜を楽しむ余裕のあるのは初日だけなので、途中できのこをたくさん採り、東沢谷でイワナを釣り(水量の多いせいかあまり釣れなかった)、たき火を囲んで気持ちを盛り上げる。

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8/23 晴れのち時々小雨
これから恐ろしい場所に入る心は重く、出発はかなり遅れた。パーティは30才台から70才過ぎまで、0003_xlarge男5名、女3名の大所帯。この日までに3名の死傷者を数える今年の上の廊下。メンバーには一之瀬川、丹波川、笛吹川ホラ貝のゴルジュ等の経験者も何名かいるが、選りすぐったメンバーという訳でもなく、これだけの人数が、全員無事に遡行を果たせるのか?物理的に有効な確保そして的確な判断と機敏なレスポンスだけが命を守ってくれる。

東沢谷を分けた黒部川は水量を減じて見えた(左)。しかし実際の水勢は見た目をはるかに超える。ほとんどの渡渉で流芯では腹を超える水位となり緊張したスクラム渡渉を強いられる。水流が圧縮され流速の上がる場所では、楯となる位置の者は振り子も併用し流れに抗した(右)。

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0026_xlarge渓が出てくると、こごみが何か山菜はないかと物色する。食料は現地調達を期待し、米と味噌、塩、しょうゆ、ふりかけ、テンプラ粉と油程度の質素なもの。

 

いよいよ初日の核心部口元のタル沢出合先のゴルジュ突破。右岸から左岸に渡った後、ヘツリ(左)と泳ぎでできるだけ落ち込みに近い位置までゆく(右)。

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流芯は白泡をたてる激流となっている、流芯に大岩があると記すガイドブックもあるがそんなものは跡かたもなく、対岸まで一気に泳ぎ切らなければならない。コースケがロープを引いてトップに立つ。奔流に飛び込む動きは最高の恐怖を味わうが、増水した芝川下流域でシミュレーションしてきた。下流からの確保も万全だ、「怖がらずに行け!」と声をかける。そして彼は渡り切った(左)。瞬間、皆の大歓声があがった。白泡のなかの極く小さな点が人間、黒部川のスケールが良く分かる。続いてI西が飛び込みロープで引っ張られる(右)、ゴルジュの先端まで行くのもかなり厳しいので3番手以降は左岸のへつりの途中から、ロープで引いて流芯を超えるようにした。流れにさからって人間を引っ張るのは1人では難しいので、2名が先行し後続は最短の水線通しで引き上げる方法を以後も多用した。軽量化のために使った細いフローティングロープは引っ張り上げるのには不適で、最終日までに男たちは皆、指の皮が剥けていた。0038_xlarge0041_xlarge
 

 

 

 

 

8名が核心部を突破するのには時間がかかり、本流はみるみる増水してくる。沢筋で融けた雪渓の水が時間をかけて本流に達するのか毎日14時を過ぎる頃から5cm弱の増水をみた。核心部を超えても、増水した厳しい渡渉が続き、ヘトヘトになって辿りついた廊下沢出合手前の右岸台地に幕営した。0043_xlarge手分けしてテントの設営、マキ集め、火起こしと飯炊き、食材調達に出る。日没までねばるもイワナの魚信は全くなく、この夜のメインは途中で採ってきた山菜などのテンプラだけとなったが、核心部を突破した高揚感を肴に酒もすすんだ。

 

 

8/24(月) 晴れのち霧
黒五跡付近は伏流して単独で渡渉できるほどの区間がしばらく続く。2日目になると厳しい渡渉も当たり前に慣れて、薬師岳(多分)に見守れながら美渓を楽しむ余裕もうまれた。ほぼ順調に上の黒ビンガを過ぎ、赤牛沢出合を越えた。しかし、渓は大きく、数えきれない渡渉の末にようやく辿り着いた立石から先に、この日の核心部が待ち受けていた。0055_xlarge0063_xlarge
 

 

 

 

 

 

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立石の先の長い大淵から始まる悪場は、淵の先が落差が出て大岩の間を圧縮された激流が縫い、渡渉や泳ぎは困難。大淵は泳ぎからヘツリ、飛び込みでコースケがトップで越える。その先はトップは大岩間をジャンプし流れを飛び超えるしかないが、失敗すれば確保も効かず下流の岩に全身を打ちつけながら流され大怪我をする危険がある。仕方なくここだけはリーダーのI西がトップで飛ぶ。続いてコースケが飛び、リュックを荷揚げする時、I西のリュックをロープに留めたカラビナのゲートが開いて、無情にも下流にすっ飛んでいった。もうダメだと思った瞬間、下流の大淵を渡り終えた箇所で確保していたシンジが間髪をおかず大淵に飛び込んだ。リュックを追って下流に泳ぐ、ロープが足りなくなると周りの者がすぐにロープを連結し泳ぎ続け、とうとうリュックを取り戻し、再び大淵を登ってくる。極めつけの冷水に5分近く全身浸かっていたシンジの強靭な肉体がものを言った。T津さんとK井さん(女性)の年長者2名は何故か最も薄着で、T津さんはTシャツ1枚に合羽、K井さんなどは蝋人形のように真っ白い顔となりながらこの核心部を超えていった。これまた強靭な70才前後の先輩達の姿であった。

薄暗くなりかける頃、左岸にテン場になりそうな台地を見つけテントを張る事にした。何気なく対岸の岩を見ると奇妙な形をしている。もしや立石奇岩では?イヤ、間違いない立石奇岩だ。我々はついに上の廊下を越えたのだった。ここから上流は、奥の廊下と呼ばれ、並みの沢登りになるはずだ。とは言え、天気予報は翌日の雨を告げており、僅かな増水でも黒部川では動けなくなる可能性が高い。予定外の幕営に共同の食料はほぼなくなり、マイコから個人の行動用その他の食料の供出命令が出された。

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8/25 晴れのち雨
不安のうちに明けた朝は晴れていた。安堵とやり遂げた喜びを胸に、すっかり穏やかになった黒部川を軽快に遡行すると登山道はすぐだった。行動食を節約していたので、薬師沢の小屋でカップラーメンに飛びつく。太郎平の登りで雨になったが、ここまで来れば折立はもう近い。温泉と下界の食事に惹かれて、下山の足取りは知らずに早まるのだった。

以上

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